我々は細胞死を促進する分子としてASCを報告したが、その後、ASCはcaspase-recruitment domain (CARD)とPyrinN-terminal homology domain (PYD)からなるアダプター分子であることを明らかにした。CARDは既知の結合ドメインであるが、PYDは新規の結合ドメインでPYDを持つ分子どうしの結合に関係している。ASCと新規結合ドメインPYDの発見以降、欧米の研究者による遺伝子ハンティングによってヒトだけでも20種類以上のPYD分子が報告された。PYD分子は「細胞死」と「免疫」の制御に関係する新しいファミリーとして世界的に認知され、その異常は自己免疫病やリウマチの原因やリスク因子になっているものと考えられている。ASCの生体内発現を観ると、感染の危険に曝されている表皮細胞や腸上皮細胞に高い発現が見られた。また、末梢血単球、胸腺、脾臓などの免疫関連の細胞や臓器に発現が高い。炎症反応との関連を強く示唆する結果としては、虫垂炎、C型肝炎、劇症肝炎などの炎症組織でASCの発現が顕著に増加する現象を発見した。平成14年、欧米の複数のグループから「ASCがカスペース・1を活性化し、IL-1βとIL-18のプロッセッシングと放出を促進する」という報告がなされた。感染や癌のような異常が生じた細胞は自らの「死」を選択すると同時にIL-1βやIL-18などのインターロイキンを放出して周りの細胞に危険を知らせる。従来、カスペース・1活性化経路については不明であったが、ASCはカスペース・1活性化経路のアダプター分子として重要な働きをしていることが予想されるようになった。
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