Necdinはニューロンの発生、分化に伴って発現誘導される約43kDaの蛋白質でnecdinを強制発現した細胞はその増殖が抑制される。またnecdinは細胞周期制御に関わる転写因子E2F1やp53と結合し、それらの転写活性に対して抑制的に働く。Necdinによる細胞増殖抑制機構を研究するため、Saos-2細胞を用いて、necdinの発現をTetracycline依存的なON/OEF制御可能な安定的遺伝子導入細胞を作製した。陰性コントロールとして、p53の転写活性抑制能のない欠失変異体であるnecdinΔ191-222を用いた。これらの細胞にnecdinあるいはnecdinΔ191-222を発現させて培養し、細胞増殖への影響を調べた。Necdinを発現させた細胞では細胞増殖が抑制されるのに対しnecdinΔ191-222を発現した細胞では細胞増殖に影響は認められなかった。また、necdinを2日間発現させた後発現をOFFにすると、細胞は再び正常に増殖した。フローサイトメトリーを用いて細胞周期を測定したところ、necdinの発現によってG2/M期の細胞の蓄積が起こってくることがわかった。Necdinの発現による細胞の形態上の変化を抗necdin抗体とHoechst dyeを用いて免疫細胞染色により調べた。Necdin発現後4日目より大型のFlat Cellが出現し、6日目では大型多核のendoreduplicationが認められた。これらの細胞の蓄積がG2/Marrestとしてとらえられたと考えられる。細胞周期関連遺伝子の発現をしらべたところcdc2の低下とcyclinB1の増加が認められた。これらのことより、necdinはS phase exitの機構に関与していることが考えられた。
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