レチノイン酸処理を行ってニューロンへ分化誘導させた胚性がんP19細胞cDNAライブラリーを用いてNecdinに結合する因子を検索したところ、核マトリックス蛋白質hnRNP Uが同定された。P19細胞より分化させたニューロンにおいてNecdinおよびhnRNP U共に核マトリックス画分に存在し、免疫沈降法により両者は結合していた。SAOS-2細胞にhnRNP Uおよびその変異体を遺伝子導入し、核マトリックスへの局在を調べたところC末端G rich領域が必須であることがわかった。またin vitro pull-down assayでhnRNP UのNecdin結合ドメインを決定したところ、NecdinはhnRNP Uの核マトリックスターゲットドメインとは結合せず、そのすぐN末端側約200アミノ酸残基の領域と結合することがわかった。したがってhnRNP Uの核マトリックスターゲットドメインとNecdin結合ドメインは異なることが示された。そこで次にNecdinとhnRNP Uを共発現させ核マトリックスにおけるNecdinの局在の変化を調べたところ、Necdin単独では核小体に主に分布するのに対してhnRNP Uの共発現によって核質全体に分布するようになることがわかった。さらに同条件下でNecdinの細胞増殖抑制能について調べてみた。SAOS-2細胞を用いたcolony formation assayおよびBrdU取り込み実験で、NecdinとhnRNP Uの共発現によって著しい増殖抑制効果が認められ、この効果はhnRNP Uの核マトリックスターゲットドメインあるいはNecdin結合ドメインの欠失変異体では認められなかった。したがって核マトリックスにおける両複合体が重要な働きをしていることが示唆された。
|