マクロファージによるアポトーシス細胞の認識、貪食機構を解明する目的で、我々はまず最初に貪食能を定量的に評価するアッセイ方法を開発した。ICAD変異体トランスジェニックマウスより調整した胸腺細胞にアポトーシスを誘導しこれをマクロファージに貪食させると、貪食された胸腺細胞のみがDNAの断片化を起こし、TUNEL法により検出可能となる。そこでマクロファージのマーカーとして抗Mac-1抗体を用い、TUNEL法との二重染色を施したマクロファージをFACSで解析することにより、アポトーシス細胞を貪食したマクロファージの割合を定量化することに成功した。次にマクロファージの表面抗原に対するモノクローナル抗体を作成し、このアッセイに影響を与える抗体を選び出すスクリーニングを行ったところ、マクロファージによるアポトーシス細胞の貪食を促進する抗体(2422抗体)を発見した。2422抗体が認識する分子を精製し質量分析により解析したところ、MFG-E8と呼ばれるタンパク分子であった。野生型および変異型リコンビナントMFG-E8分子を調製し機能を解析したところ、この分子はそのC末端部位でアポトーシス細胞の細胞表面上に出現するホスファチヂルセリンに結合することが分かった。またホスファチヂルセリンに結合したMFG-E8はそのN末端のRGD配列を含む部位でαVβ3インテグリンに結合することが判明した。リコンビナントMFG-E8をαVβ3インテグリンを発現した3T3細胞に加えると、アポトーシスを起こした胸腺細胞を貪食することが観察され、さらにRGD配列をRGEに変えた変異MFG-E8はマウス腹腔内マクロファージによるアポトーシス細胞の貪食を阻害した。これらのことからMFG-E8はアポトーシス細胞とマクロファージをリンクし、アポトーシス細胞の貪食を促す機能を持つ分子であることが明らかとなった。
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