1.PLC-εの発現解析 ノーザンブロットの結果から、PLC-εの発現は、成体では殆ど無いか、あっても極めて微量であり、胎児期特異的であるといえる。発現のピークは、胎生11日目であり、mRNAのサイズは約7.8kbであった。in situハイブリダイゼーションを行ったところ、発現組織は、神経系と筋肉系であることが判った。神経系組織の中でも、発現部位としては脳室壁周囲、神経管周囲、並びに三叉神経節、後根神経節など、神経前駆細胞が活発に分裂増殖しつつ分化をとげる領域に限られていた。このことは、PLC-εが初期神経発生に関与している可能性を示唆する。一方、筋肉系の組織における発現は、胎生期12〜14日では心筋、骨格筋に認められ、15日になると、特に舌筋で強い発現が観察される他に、平滑筋、横隔膜にも発現が認められ、PLC-εの発現と筋肉の分化増殖との関わりも示唆される。 2.抗PLC-ε抗体の作製 PLC-εのカルボキシ末端約100アミノ酸をグルタチオンS-トランスフェラーゼとの融合蛋白として大腸菌内で産生し、精製した。これを用いて、抗PLC-ε抗体を作製した。 3.ノックアウトマウスの作製 PLC-ε遺伝子を含むBACクローンを得てゲノム地図を作成し、PLC-ε遺伝子を欠損させる為のターゲッティングベクターを作製した。これを、エレクトロポレーション法で、胚生幹細胞に導入し、約1200個のネオマイシン耐性のコロニーを単離した。その各々を増殖させDNAを精製し、サザンハイブリダイゼーションを用いて、目的とする組み換えを起こしたクローンのスクリーニングを行ったところ、組み替え体を持つクローンが4つ得られた。
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