研究概要 |
アルカリホスファターゼ(ALP)は骨形成マーカーとして広く利用されているにもかかわらず、その生理的役割がほとんど明らかにされていない。そこで、骨形成に重要な脂溶性ビタミンによるヒトの骨ALPの制御機構を明らかにし、骨形成におけるALPの機能解析の手がかりを得る目的で以下の研究を行っている。まず、ヒト骨芽細胞系の細胞株において、ALP活性が、脂溶性ビタミンの投与によりどのように変化するかを調べるため、MG63、U2OS、およびコントロールとしてヒト肝細胞癌由来のHepG2を用い、脂溶性ビタミン、すなわち10^<-6>M all-trans retinoic acid、または10^<-7>M 1,25-dihydroxycholecalciferol(1,25-(OH)_2 vit.D)を添加して培養し、細胞のALP活性を測定するとともに、RT-PCRを用いてmRNAの検出と発現するリーダーエクソンの種類を検討した。MG-63では、1,25-(OH)_2 vit.D添加後6時間でmRNAが増加し、24時間後に活性が上昇したが、レチノイン酸には反応しなかった。U2OSではレチノイン酸添加により、48時間後にALP活性の上昇が認められたが、ビタミンDには反応しなかった。HepG2はともに反応しなかった。増加したmRNAは1Bが発現していることが明らかとなり、骨型であることが確認された。一方、ヒトTNSALP遺伝子の1Bの5'上流領域を-4559までクローニングし、塩基配列を決定した。その結果、VDRE(Vitamin D response element)類似のモチーフ、RARE(Retinoic acid response element)類似のモチーフ、ならびにオステオカルシン遺伝子上流に認められ、骨芽細胞機能に重要と考えられるOSE(Osteoblast-specific cis-acting element)のモチーフが複数見出された。この上流領域を、ルシフェラーゼ遺伝子をもつ発現ベクターに挿入し、解析用のベクターを構築した。今後このベクターを用いてエンハンサー部位を確定する予定である。
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