研究概要 |
アルカリホスファターゼ(ALP)は骨形成マーカーとして広く利用されているにもかかわらず、生理的役割については十分に明らかにされていない。そこで、骨形成に重要な脂溶性ビタミンによる骨ALP遺伝子の転写調節機構を解析し、骨形成におけるALPの機能を明らかにする手がかりを得る目的で本研究を行った。昨年度は骨芽細胞様細胞株MG63とU_2OSにおいて、それぞれ10^<-7>M1,25-dihydroxycholecalciferol(1,25-(OH)_2 vit.D)または10^<-6>M all-trans retinoic acidの添加により骨型ALPのmRNAとALP活性が増加することを確認した。今回SaOS2細胞でも同様に検討し、レチノイン酸添加に反応してmRNAとALP活性が増加することを確認した。MG63とレチノイン酸、U_2OSまたはSaOS2とvit.Dの組み合わせではALPの変化はみられなかった。一方、昨年度は、ヒト組織非特異型ALP遺伝子の骨型リーダーエクソンの上流を-4560bpまでクローニングし、塩基配列を決定したが、今回さらに、-4560〜-770までの上流領域をpGL3 Promoter Vectorに挿入したものと、-4560〜-122(転写開始点-188を含む)をpGL3 Basic Vectorに挿入したものの各々について、約500bpずつのdeletion mutantを作製し、pGL3PVでは合計8種、pGL3BVでは合計7種のルシフェラーゼ・アッセイ用発現ベクターを調製した。転写活性の測定はtransfectionの内部標準としてシーパンジー・ルシフェラーゼの発現ベクターを利用したdual luciferase assayにより行った。現在なお検討中であるが、クローニングした上流領域全長では、vit.Dやレチノイン酸添加による転写活性の大きな増加は認められなかった。今後ルシフェラーゼ・アッセイの結果をまとめ、転写活性の増加を認めた領域をさらに細かく分割してアッセイを行い、領域を決定するとともに、その内部のcis element結合モチーフと思われる塩基配列をゲルシフト法により決定する予定である。
|