組織非特異型アルカリホスファターゼ(以下TNSALP)は周知の骨形成マーカーであるが、骨代謝に影響する脂溶性ビタミンによる調節機序は不明であり、その解明を目的に研究を行った。ヒト骨肉腫由来の骨芽細胞様細胞株SaOS-2では、10^<-6>M全トランスレチノイン酸によりTNSALP mRNA量と酵素活性が誘導され、MG-63細胞では10^<-7>M活性型ビタミンDにより誘導された。ヒトTNSALP遺伝子上流4.5kbをクローニングし塩基配列を決定し、ルシフェラーゼ発現ベクターに挿入し、欠失変異体を作製した。これを用いてSaOS-2細胞でルシフェラーゼ・アッセイを行うと、レチノイン酸応答配列様配列の存在する領域で転写活性が上昇した。ゲルシフト法(EMSA)により、この配列にSaOS-2細胞核抽出物が特異的に結合し、レチノイン酸レセプターα、βおよびこれらとheterodimerを形成するレチノイドXレセプターβの各抗体によりsupershiftすることを見出した。すなわちレチノイン酸によるTNSALPの誘導は、TNSALP遺伝子上流(-1012〜-999)のレチノイン酸応答配列を介した調節であり、この細胞では上記のレセプターが発現することも確認した。以上の結果はBone 36(2005)866-876に報告した。 一方、MG-63細胞にビタミンDを加えた時のルシフェラーゼ・アッセイでは転写活性の上昇は見られず、TNSALP遺伝子の上流-3444〜-3430のビタミンD応答配列様配列は機能していなかった。また負のビタミンD応答配列様配列を持つ領域でルシフェラーゼ活性が低下したが、EMSA法では特異的結合は見られなかった。以上の結果から、ビタミンDによるTNSALPの発現調節機構は間接的機序によるものと示唆された。現在TNSALP mRNAの安定性を検討しており、これを含めて報告する予定である。
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