研究概要 |
ヘム結合蛋白質HBP23(Heme Binding Protein, Mr:23,000)は、ヘムに強い結合能を有するラット可溶性蛋白質であり、peroxiredoxinファミリーに属する。本ファミリー蛋白質は、システイン残基を活性中心とする新しいタイプのperoxidaseであり、thioredoxin依存性にその活性をしめす。52位および173位のシステイン残基をセリンに変換した変異体(Cys52Ser、Cys173Ser、Cys52-173Ser)は83位のシステイン残基をセリンに変換した変異体(Cys83Ser)とは異なり、peroxidase活性を消失した。変異体(Cys83Ser)のX線による結晶構造解析から、酸化型2量体は2つのサブユニットからそれぞれ提供されたCys-52とCys-173によりジスルフィド結合が形成されている。またこのジスルフィド結合の近傍には2つのアルギニン残基、Arg-123およびArg-151、が存在する。これら残基に変異を導入するとperoxidase活性は減小した。酸化型結晶にみられたジスルフィド結合はperoxidase反応における1つの反応中間体であると推察される.またアルギニン残基はCys-52のpK値を下げることによりその反応性を増加させていると推察される。HBP23は1:1の割合でヘムに結合する。HBP23におけるthioredoxin依存性peroxidase活性は、ヘムにより部分的に阻害された。共鳴ラマンスペクトルによる解析から、ヘムはHBP23のアミノ酸に配位していると推定された。細胞内のヘムの濃度が上昇するとHBP23の発現は促進され、HBP23におけるヘムの生理的意義についてはさらに検討が必要である。ウエスタンブロット法による解析から、ラット肝可溶性画分にはHBP23分子種として2種(2量体および10量体)存在するとの示唆を得た。
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