E-NPP(ecto-nucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase I)は細胞外の核酸の代謝に関与するII型の膜酵素である。平成12年度は先天性乳児動脈石灰化症というまれな異所性の石灰化を起こす疾患の患者細胞を解析し、E-NPP1の発現が著明に減少していることを明らかにした。この事からE-NPP1は生理的な役割として局所におけるミネラリゼーションのバランスを司っていると考えられた。今年度はE-NPP3に対するモノクローナル抗体を作製した。この抗体は血液細胞では好塩基球を特異的に認識することを明らかにした。そして2001年のヒト白血球抗原ワークショップでCD203cにクラスターされた。さらに、この抗体を用いて肺がん、大腸がん、肝がん、胆管がんの組織染色を行い、腫瘍組織においては周囲組織に比べて明らかにその発現が亢進している事を明らかにした。肺がんでは腺がんに高い発現が見られたが、扁平上皮がんには発現していなかった。さらに線維芽細胞にE-NPP3遺伝子を導入すると、その遊走能が著明に亢進することをも明らかにした。これらの事から、E-NPP3はがんの浸潤に関与していると考えられる。さらに大腸がん、肝がん、胆管がんの患者血清中にはE-NPP3が上昇していることも示した。これらの成果はこの分子が新しいがんの早期発見のマーカーとして有用である可能性を示唆している。
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