本年は局所炎症に伴なう、全身性の発熱の機序を明らかにした。 カラゲニン炎症による発熱 ウィスターラット(雄8週齢)をハロセン麻酔し、右後肢の足底部皮下にカラゲニン(3mg/0.1mL)を注射した。あらかじめ腹腔内に留置した体温送信機により、腹腔内温度を測定した。ラットの体温は注射3時間後に上昇しはじめ、6時間でピーク(約2℃の上昇)に達した、その後緩やかに回復した。この発熱はシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤によりほぼ完全に抑えられた。すなわち、カラゲニンによる局所炎症時にも著明な発熱がおこり、その発熱はシクロオキシゲナーゼ-2に依存している。 カラゲニン発熱中の脳内プロスタグランジン系の変化 ラットにカラグニンを注射した後、時間経過に沿って脳脊髄液と脳を採取し凍結させた。脳脊髄液中のプロスタグランジンE2(PGE2)濃度は、カラゲニン投与後3時間で上昇を示し、6時間でピークを示した。すなわち、発熱大きさと脳脊髄液中PGE2上昇は時間的に同様な時間経過を示した。 PGE2合成に必須であるCOX-2とその下流のmembrane-bound PGE synthase(mPGES)の発現を、脳で免疫組織化学的に検討した。カラゲニン注射後3時間で脳血管内皮細胞にCOX-2が発現した。mPGESもほぼ同様な時間経過でmPGESも脳血管内皮細胞に発現した。さらに、COX-2とmPGESの2重染色により、この両酵素は同一内皮細胞の同一細胞内分画(核膜周囲)に共発現していた。 以上の結果はカラゲニンによる局所の炎症が何らかのメカニズムで脳血管内皮に影響をおよぼし、そこでのPGE合成系を活性化させて全身性の発熱を引き起こすことを示す。来年度は、局所の熱発生の機序について研究を進める予定である。
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