1.ラットの足底部皮下にカラゲニン(3mg/0.1mL)を注射すると、ラットの体温は注射3時間後に上昇し始め、6時間でピーク(約2℃の上昇)に達し、その後緩やかに回復した。この発熱はシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤によりほぼ完全に抑えられた。即ち、カラゲニンによる局所炎症時にも著明な発熱がおこり、その発熱はシクロオキシゲナーゼ-2に依存している。 2.脳脊髄液中のプロスタグランジンE2(PGE2)濃度は、カラゲニン投与後3時間で上昇を示し、6時間でピークに達し、発熱の大きさと脳脊髄液中PGE2上昇は時間的に同様な時間経過を示した。次に、PGE2合成に必須であるCOX-2とその下流のmembrane-bound PGE synthase(mPGES)の発現を脳で免疫組織化学的に検討した。注射後3時間で脳血管内皮細胞にCOX-2が発現した。mPGESもほぼ同様な時間経過でmPGESも脳血管内皮細胞に発現した。さらに、COX-2とmPGESの2重染色により、この両酵素は同一内皮細胞の同一細胞内分画(核膜周囲)に共発現していた。 3.カラゲニン注射3時間後から注射側の足底部にインターロイキン-1beta(IL-1b)IL-1b陽性細胞が出現し、その数は6時間から12時間で最大値を示し、24時間後には減少した。すべての時間を通して、IL-1b陽性細胞の多くはED-1抗体で認識されるマクロファージ系の細胞であった。また、注射後6時間以降では、IL-1b陽性細胞の一部は顆粒球であった。一方、炎症部位から心臓に還流する血球成分についてIL-1bの免疫染色を行ったが、陽性細胞は認められなかった。以上の結果から、炎症部位から心臓に還流する静脈血には、非炎症側のそれと比べて高濃度のIL-1bが含まれていることが予想されたが、現時点では血漿中のIL-1bに左右差が認められていない。現在、ELISAの測定感度を改善する努力を行っている。
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