研究概要 |
遺伝的背景の異なる2種のラット、ルイスラットおよびブラウンノルウエー(BN)ラットを抗原刺激でそれぞれ特異的にTh1、Th2細胞を誘導し、この誘導過程でTh1/Th2への分化に関与するサイトカインおよびその受容体の変化をmRNAレベルで測定した。ルイスラットでは、IL12p40が強く発現していて、in vitroの抗原刺激でIL12p35/p40共に強く誘導されることが明らかになった。更に、IL12受容体,IFNγ受容体も顕著に誘導されており、その結果、Th1の特徴であるIFNγの増加が見られた。外来抗原の侵入によりマクロファージ、デンドリテイク細胞が、まずはじめにIL12を分泌しナイーブヘルパーT細胞をTh1型に誘導していることが、この系で明らかとなった。(Microbiol Immunol.2001 45:373) 一方、マクロファージにおいてIFNγにより誘導される抗原提示能は、Th1型への誘導にも重要な役割をはたしている。我々は、以前ホルボールエスレル(TPA)により、HLA-DRが著しく増加する現象を発見した。(Immunology 1992,75:15)この原因を明らかにする目的で、STAT1、CIITA、IFNγレセプターの発現レベルを調べた。その結果、この現象はTPA処理によるIFNγレセプターの増加が原因であることを解明した。(J. Immunol. 1999,162:4381)そこで更に、IFNγレセプター遺伝子がTPAにより活性化されるメカニズムにつき検討し、そのプロモーター域にTPA-応答エレメントを発見した。(J. Biol Chem 2001,276:37227) この研究で発見したシスーエレメント(TPA-応答エレメント)をDecoy DNAとして用いて炎症刺激で増加するIFNγレセプターの発現を抑制し、MHCクラスIおよびII分子の発現も抑えることにより、移植片の拒絶反応を抑える臨床応用へと発展させる計画を進めている。
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