研究概要 |
腺組織に特異的に発現する糖転移酵素Gal NAc T3の遺伝子プロモーター領域や抗癌剤耐性細胞で発現亢進するインターロイキン13受容体の遺伝子プロモーター領域は、ともにG・Crichな配列であり、約60塩基からなるステム・ループ構造を形成し、転写の制御に重要な役割を果たしていることが示唆されている。 Gal NAc T3遺伝子に関しては、in vivoでステム・ループ構造を形成していることを明らかにし、既に発表した(Cancer Res.59(24)6214-6222,1999)。本年度は、まずインターロイキン13受容体遺伝子のプロモーター上に示唆されていたステム・ループ構造が、in vivoで形成されていることを確認した。 こうした60塩基にも及ぶステム・ループ構造を安定に形成するには、通常のヌクレオソーム構造と両立することは難しいと考えられる。そこで、ヌクレオソーム構造のリンカー部位を優先的に切断するマイクロコッカル・ヌクレアーゼを用いて、その切断点を解析したところ、Gal NAc T3・インターロイキン13受容体両遺伝子ともに、プロモーター領域にヌクレオソーム構造が形成されていないことが判明した。 この知見は、ステム・ループ構造が転写制御に重要な役割を果たしていることを補強するものであり、同時に、in vivoでのステム・ループ構造の形成が、別の観点からも検証されたものであると考えている。 ステム・ループ構造を保持・安定化する蛋白質因子のクローニングに関しては、培養細胞から因子を単離・精製し、その部分アミノ酸配列からクローンをスクリーニングする方針であるが、部分アミノ酸配列決定に必要な量の因子精製に難航している。
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