我々はα-ジストロブレビン(DB)を介したSG複合体による神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)の活性制御を仮定し、その破綻が筋ジストロフィー発症の一因であると考えて研究を進めている。昨年我々はジストロフィン複合体にはDB分子種(DB1/DB2/DB3)によって区別される3種類が存在すること、その中でDB3を擁した複合体だけがnNOSアンカータンパク質であるシントロフィン(Syn)を結合していないことを明らかにした。今年度はこのヘテロなジストロフィン複合体の存在がnNOS、そしてnNOSに結合するカベオリン3(Cav3)とどう関連するかに興味を抱き解析を行った。 1.nNOSはジストロフィン複合体を筋細胞膜から精製する過程でかなり失われ、我々の系そのままでnNOSついて議論するのは難しいことがわかった。そこでnNOSの遊離を抑えるため文献を参考に筋細胞膜を解裂可能な化学架橋剤(DSP)で処理してから抽出し免疫沈降を行った。変性還元下で電気泳動したところ、架橋により不溶化が生じていることがわかり解析できなかった。現在架橋及び抽出条件の検討を行っている。 2.最近の文献でジストロフィン複合体の一部がCav3を含む膜ドメイン(ラフト)に局在することが報告された。我々はそこにDB1/DB2が含まれ、DB3は含まれないだろうと予測して解析を行った。しかしラフトが文献記載のように得られず、現在調製法の検討を続けている。 3.筋細胞膜上に存在するコスタメア構造(CM)でのDB分子種に関心を持ち(2)と並行して解析を進めた。最近の報告を考慮するとM線上のCMにDB3が、従ってそこにはSynやnNOSが存在しないと予想されたからである。ただDB3の抗体活性が弱いことや試料作成に熟練を要し、これも結論できないでいる。こうした状況からこれまでの成果を一旦論文にまとめ、投稿する準備も進めている。
|