| 研究概要 |
乳腺の早期浸潤癌について臨床病理学的解析を行うために、まず浸潤のみられない癌(非浸潤性乳管癌)の解析を行った。病理組織学的には、日本乳癌学会研究班(大内班)の研究結果のまとめとして、同学会の欧文誌Breast Cancer7巻(2000年10月)に、A proposal for the histopathological diagnosis of ductal carcinoma in situ of the breast(Moriya T et al.)として論文発表した。この中で、微小浸潤については、研究者による認識が一致しておらず、今後の検討課題であることを明言した。次に、非浸潤性乳管癌の細胞診(細胞像)に関して検討を行い、その成果を第41回日本臨床細胞学会総会(平成12年6月2日、東京)におけるシンポジウム"乳腺穿刺吸引細胞診における組織像推定の意義と問題点"、ならびに第39回日本臨床細胞学会秋季大会(平成12年11月18日、大宮)におけるコンセンサスシンポジウムにて、それぞれ発表を行った。これらの検討結果からは、非浸潤癌の細胞像は浸潤性乳癌のそれと著しい差はなく、細胞学的な鑑別は難しいと思われ、微小浸潤癌を細胞診で判別することは困難であるものと結論づけられた。
微小浸潤癌については、過去に病理組織診断が施行された乳癌の中から、浸潤径1mm未満の症例をを選び出し"乳腺の微小浸潤癌(浸潤径1mm以下)の病理学的検討"として第90回日本病理学会総会(平成13年4月6日、東京)にて発表を行う予定である。長径1mm未満の微小浸潤巣を伴う癌15例の年齢は平均46.4歳(34〜62歳)、いずれも乳管癌で、微小浸潤巣は乳管または小葉外間質内に孤立細胞,非浸潤部からの連続,小胞巣状等の形態をとり,多くが間質反応を認めた.浸潤巣の数は8例で2個以上存在した.微小浸潤性乳管癌の非浸潤部にはコメド型癌や核異型が強いものが多い特徴を有しており、日常診療の検索範囲では転移を示唆する所見はなく、非浸潤癌に近い性状と思われるた。しかし最終結論のためにはリンパ節への微小な転移巣の検索や長期予後観察を加える必要があり、分子生物学的解析とともに、今後の検討課題と考えている.
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