研究概要 |
1.APC 種々の組織型を示す胃癌細胞株10株、原発胃癌40例およびその背景粘膜について、APCの2つのプロモーター領域(promoter 1A & promoter 1B)のメチル化を検索した。promoter 1Aのメチル化は、細胞株10株全て、原発胃癌の82.5%(33/40),背景粘膜の97.5%(39/49)に検出されたが、promoter 1Bにはメチル化は全く生じていなかった。APCmRNAの発現はプロモーターのメチル化の状態と良く相関しており、細胞株における検索では、ほとんどの株でAPCはexon 1Bから発現していた。 2.hMLH1 MSIを示す多発胃癌と単発胃癌、およびそれらの背景粘膜(非癌粘膜)についてhMLH1遺伝子プロモーター領域のメチル化を検索した。MSI-Hの多発、単発すべての病変にhMLH1プロモーターのメチル化を検出し、背景粘膜では、MSI-Hの多発病変部周囲の62.5%(5/8),単発病変部周囲の53.8%(7/13)にメチル化が検出された。MSI-H胃癌ではhMLH1プロモーターのメチル化が背景粘膜に拡大しており、MSI-H多発胃癌の発生母地と推測される。 3.E-cadherin 原発胃癌53例についてE-cadherinプロモーター領域のメチル化を検索した。メチル化は未分化型癌(びまん浸潤型)の83%(15/18)、その他の組織型では34%(12/35)に認められた(p=0.0011)。E-cadherinプロモーターメチル化はbisulfite-sequencingによっても確認された。MSPによるメチル化の検出結果とWestern blottingの結果は良く相関した。プロモーター領域のメチル化によるE-cadherinの不活化は未分化型癌の発生に重要な変化と考えられた。
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