1.山梨医科大学において手術された乳癌235例について、抗c-erbB-2抗体(ニチレイ社、ポリクローナル)を用いた免疫染色を行ったところ、52例(22.1%)にc-erbB-2蛋白の過剰発現(3+/2+)を認めた。この52例と代表的陰性例70例について、c-erbB-2遺伝子と染色体17のセントロメアに対するDNAプローブを用いて二色のfluorescence in situ hybridization(FISH)を行ったところ、c-erbB-2の蛋白過剰発現と遺伝子増幅の一致率は95.7%であった。乳癌において、c-erbB-2の蛋白過剰発現は大部分が遺伝子増幅によっておこると結論された。 2.上記症例のうち新鮮標本の得られた35例について、塗沫細胞を用いたFISH法を行い比較したところ、大部分は一致したが、切片で軽度増幅とされた2例は塗沫細胞では染色体17のポリソミーであった。塗沫細胞を用いたFISH法は軽度増幅と染色体17のポリソミーによる見かけ上の増幅との鑑別に有用であると結論された。 3.小松市民病院外科で手術された乳癌173例について、同様に免疫染色とFISHを行った結果、c-erbB-2の蛋白過剰発現と遺伝子増幅の相関は高く(p<.000001)、c-erbB-2の蛋白過剰発現と遺伝子増幅は浸潤乳管癌のintraductal spreadingとに有意の相関がみられた(p<.0001)。 4.山梨医科大学において手術された大腸癌62例について免疫染色法によってc-erbB-2蛋白の過剰発現を調べたところ、3例に細胞膜上での蛋白の過剰発現をみとめた。 5.山梨医科大学において手術された膵癌35例について免疫染色法によってc-erbB-2蛋白の過剰発現を調べたが、細胞膜上での蛋白の過剰発現をみとめた例はなかった。
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