MALTリンパ腫、NK細胞リンパ腫を中心として皮膚ホーミングレセプターを始めとする各種接着因子の発現を検討した。今年度明らかにした成果の概略をのべる。MALTリンパ腫のおける接着因子発現は均一でなく、消化管ではα4β7インテグリンが高発現したが、眼付属器、甲状腺では低いことを見出した。また、高悪性度化した大細胞型リンパ腫においては、消化管であっても同分子は発現を欠いていた。また、同分子のリガンドであるMAdCAM-1の発現もα4β7インテグリンと同様の発現様式が見られ、臓器間格差がみられた。これらの所見は、実際の臨床症例のおけるリンパ腫細胞の動態と関係することが示唆された。MALT1-API2については、現在研究が進行中であるが、通常大細胞型では発現が見られないとする従来の報告と異なり、少なくとも胃以外の例えば眼付属器では大細胞型リンパ腫でも発現することがあることが判明した。NK細胞リンパ腫については、CLA発現と原発臓器および症例の予後との間に密接な関連があることを見出した。すなわち、CLA陽性症例は皮膚例で有意差をもって高率に発現していること、また、CLA陽性例は陰性症例に比べて有意に予後が不良であることが判明した。これらの成果のうち、MALTリンパ腫の症例解析、接着因子に関わる成果はMod Patholなど誌上報告し、MALT1-API2の結果については論文準備中である。NK細胞リンパ腫とCLA発現に関する成果は現在論文投稿中である。
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