マイクロサテライト不安定性胃癌におけるミスマッチ修復系遺伝子不活化機構の解明

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670163
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 横崎 宏 広島大学, 医学部, 助教授 (10200891)
• キーワード: 胃癌 / マイクロサテライト不安定性 / ミスマッチ修復 / 遺伝子変異 / DNAメチル化

研究概要

高齢者の同一胃内に多発し、その大半が隆起型高分化型腺癌である臨床病理学的特徴を有するマイクロサテライト不安定性(MSI陽性)胃癌の分子発生機構を検索する目的で、本年度は以下の解析を終了した。
1)MSI陽性胃癌におけるDNAミスマッチ修復系(MMR)遺伝子変異の解析:これまで収集された26例のMSI陽性胃癌のホルマリン固定・パラフィン包埋切片よりゲノムDNAを抽出し,hMLH1ならびにhMSH2遺伝子各エクソンについてPCR-SSCP法を施行した。26例中19例において両遺伝子の変異は確認されず、2例にhMLH1の生殖細胞変異を、また、5例(6病変)にhMLH1の体細胞変異を認めたのみであった。さらに、これらの病変において当該遺伝子のsecond hitを証明することは出来なかった。
2)MSI陽性胃癌におけるMMR遺伝子産物発現解析:1-1)で変異検索を行う全例について,hMLH1特異抗体を用いた免疫組織化学を施行したところ、MSI陽性胃癌組織においてhMLH1の選択的発現減弱・消失が認められた。また、一部の症例については、ウエスタンブロット法、RT-PCR法によっても癌組織においてhMLH1遺伝子産物・mRNAの発現減弱・消失が確認された。
3)プロモーター領域DNAメチル化検出法の確立:以上より、MSI陽性胃癌におけるhMLH1の不活化機構にプロモーター領域DNAメチル化が重要な役割を果たすことが示唆されたため、パラフィン包埋病理検体に対応可能なSodium bisulfite法を基礎としたメチル化特異的PCR法を確立し、現在各症例について検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Yokozaki H, et al.: "Genetic and epigenetic changes in stomach cancer"Int Rev Cytol. 204. 49-95 (2001)
• [文献書誌] Yokozaki H: "Molecular characteristics of eight gastric cancer cell lines established in Japan"Pathol Int. 50・10. 767-777 (2000)
• [文献書誌] Yokozaki H: "Distribution of BAT-40 poly-adenine tract microsatellite variants in the Japanese"Int J Mol Med. 6・4. 445-448 (2000)
• [文献書誌] Yokozaki H, et al.: "Cloning of a human hepatocyte growth factor/scatter factor transcription variant from a gastric cancer cell line HSC-39"Int J Oncol. 16・1. 105-108 (2000)
• [文献書誌] Suzuki T,Yokozaki H, et al.: "Effect of trichostatin A on cell growth and expression of cell cycle- and apoptosis- related molecules in human gastric and oral carcinoma cell lines"Int J Cancer. 88・6. 992-997 (2000)
• [文献書誌] Fujimoto J,Yokozaki H, et al.: "DNA hypermethylation at the pS2 promoter region is associated with early stage of stomach carcinogenesis"Cancer Lett. 149・1-2. 125-134 (2000)
• [文献書誌] 横崎宏: "標準理学療法学・作業療法学専門基礎分野病理学(梶原博毅・編)"医学書院. 268 (2000)