研究概要 |
【研究目的】マイクロサテライト不安定性胃癌の臨床病理学的特徴を明らかにするとともに,その分子背景としてのミスマッチ修復系遺伝子不活化機構を明らかにする。 【研究計画】ルーチンマイクロサテライト解析により収集されたマイクロサテライト不安定性胃癌におけるミスマッチ修復系遺伝子(hMLH1,hMSH2)の生殖細胞・体細胞変異をPCR-SSCP法,直接塩基配列決定法を用いて検討した。ミスマッチ修復系遺伝子産物の発現をウエスタンブロット法,免疫組織化学により検証した。また、パラフィン包埋切片からのメチル化特異的PCR法を確立し,ミスマッチ修復系遺伝子のプロモーター領域DNAメチル化解析を行った。 【研究成果】1000例を越える胃病理検体に対するルーチンマイクロサテライト解析から,胃癌の内でもマイクロサテライト不安定性を示すものは,胃癌全体の約6%を占め,その大半が隆起型高分化型腺癌で,70歳以上の高齢者に多く,高頻度に多発胃癌を合併することを明らかにした。いずれの症例においてもミスマッチ修復系遺伝子のゲノムレベルでの2ヒット変異は証明されなかったが,hMLH1プロモーター領域メチル化ならびにhMLH1産物の発現消失が確認された。以上,本研究から,マイクロサテライト不安定性胃癌発生の分子病理学的背景にhMLH1のメチル化によるエピジェネティックな不活化機構によるミスマッチ修復系異常が深く関与していることが示された。
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