外科的に切除されたヒト肺癌(扁平上皮癌、腺癌)における腫瘍および腫瘍浸潤リンパ球(Tumor-infiltrating lymphocyte : TIL) 等の浸潤炎症細胞での一酸化窒素合成酵素(inducible nitric oxide synthase : iNOS)の発現状況とを比較検討し、肺癌では腫瘍症例の80%異常にiNOS発現を認め、周囲に浸潤するiNOS陽性組織球と有意な相関が得られたがTIL及び樹状細胞(Dendritic cell)とは相関は得られなかった。一方腎癌においてvon Hippel Lindau(VHL)遺伝子の変異が特にclear cell type腎癌の腫瘍化との関連において重要であるが、これら腎癌に関してもiNOS発現を免疫組織学的に検討し、p53遺伝子発現異常との関連、さらにはVHL遺伝子変異との関連の有無を重ねて検討した。腎癌に関してはp53抗体を用いた免疫組織化学的検索では、陽性症例は1%以下であり、iNCS発現とは関連が得られなかった。一方でVLH遺伝子については、それぞれの癌組織の未固定新鮮材料より個別にDNAを抽出し、これを用いてシークエンス法を用いてVHL遺伝子の変異の有無を解析し、腫瘍におけるiNOS発現と遺伝子変異との関連を統計学的に解析したところ、VHL遺伝子変異腫瘍におけるiNOS発現が高率に認められ(P=0.016)、VHL遺伝子変異におけるiNOS発現の間接的関与が示唆された。
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