ヒト肉腫における新しい特異的染色体および遺伝子異常の同定と病理診断への応用

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670165
• 研究機関: 高知医科大学
• 研究代表者: 園部 宏 高知医科大学, 医学部, 助教授 (20145121)
• 研究分担者: 田口 尚弘 高知医科大学, 医学部, 助手 (80127943) ; 竹内 保 高知医科大学, 医学部, 助手 (50226990)
• キーワード: 肉腫 / 染色体分析 / 遺伝子解析 / 細胞株 / 症例

研究概要

本課題研究では、種々の肉腫の染色体および遺伝子レベルの解析から得られた知見を病理診断に応用すべく、蓄積されていた症例、新しい症例や樹立した肉腫細胞株について検討した。本研究でこれまでに染色体ないし遺伝子の一方、もしくはその両方が解析できた肉腫には、悪性神経鞘腫瘍(MPNST)、多形型横紋筋肉腫、胃腸間質腫瘍(GIST)などがあり、主な結果の概要に以下について述べる。
(1)MPNSTでは、今回樹立した2細胞株、HS-Sch-2とHS-Sch-3は、共に複雑な核型を示し、特異的パターンは不明であった。今後は、NF2の異常の有無を中心に検討したい。(2)多形型横紋筋肉腫では、今回樹立した1細胞株、HS-RMS-1は、染色体分析では、複雑な核型を示し、特異的パターンは不明であった。しかし、横紋筋への発生分化に関与する遺伝子myoD1とmyogeninの転写産物および蛋白レベルの発現を証明できた。本細胞株は、この腫瘍からの樹立細胞株としては最初のものである。(3)GISTでは、樹立した細胞株GIST-T1は複雑な核型を示し、CGHとFISHによる詳細な検討で3q26-27,5p12-15などの増幅を示した。今後は、これらに局在する癌遺伝子との関連を明らかにしたい。(4)類上皮肉腫では、樹立した細胞株HS-ES-1aと1bで22qの再構成を認めたことから、EWSを含む異常の有無を検討したが予想に反し、その異常は明らかでなかった。今後は、同じ22qにあるNF2に関連する異常があるか否か検討したい。(5)滑膜肉腫では、2例の腎病変についてパラフィン包埋外科材料を用いてRT-PCRにより、特異的なSYT-SSX2を同定した。腎においても本腫瘍が存在することを明らかにした。(6)卵巣の線維性腫瘍においては、tetrasomy12がその増殖能の増強に関連することをパラフィン切片を用いたFISHにより明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] 園部宏: "線維性腫瘍における染色体異常および遺伝子異常"病理と臨床. 18. 129-138 (2000)
• [文献書誌] Hashimoto N 他6名: "STY-SSX fusion proteins in synovial sarcomas : detection and characterization with new antibodies."Cancer Letter. 149. 31-36 (2000)
• [文献書誌] Takeuchi T 他4名: "Expression of T-cadherin (CDH13, H-cadherin) in human brain and its charracteristics as a negative growth regulator of epidermal growth factor in neuroblastoma"Journal of Neurochemistry. 74. 1489-1497 (2000)
• [文献書誌] Sonobe H, et al.: "A new human pleomorphic rhabdomyosarcoma cell-line, HS-RMS-1 exhibiting MyoD1 and myogenin"International Journal of Oncology. 17. 119-125 (2000)
• [文献書誌] Sonobe H, et al.: "A new human malignant peripheral nerve sheath tumour-celline, HS-Sch-2 harbouring p53 point mutation"International Journal of Oncology. 17. 347-352 (2000)
• [文献書誌] Sonobe H, et al.: "A giant cell angiofibroma involving 6q"Cancer Genetics & Cytogenetics. 116. 47-49 (2000)
• [文献書誌] Hashimoto N 他5名: "Detection of SYT-SSX fusion gene in peripheral blood from a patient with synovial sarcoma"American Journal of Surgical Pathology. 25. 406-410 (2001)
• [文献書誌] Takeuchi T 他4名: "Expression of SMARCF1, a truncated form of SWII, in neuroblastoma"American Journal of Pathology. 158. 663-672 (2001)
• [文献書誌] Liang SB,Sonobe H, et al.: "Tetrasomy 12 in ovarian tumors of the coma-fibroma group : A fluorescence in situ hyberidization analysis using paraffin sections"Pathology International. 51. 37-42 (2001)
• [文献書誌] Kim DH 他5名: "Primary synovial sarcoma of the kidney"American Journal of Surgical Pathology. 24. 1097-1104 (2001)
• [文献書誌] Takeuchi T,Misaki A,Sonobe H, et al: "Is T-cadherin (CDH13, H-cadherin) expression related to lung metastasis of osteosarcoma?"Histopathology. 37. 193-194 (2001)