研究概要 |
1.悪性軟部腫瘍におけるPTEN遺伝子異常 特異的な染色体転座を有しない悪性軟部腫瘍の新鮮凍結病本51例からDNAを抽出しPCR-SSCP、Direct sequence法にて癌抑制遺伝子PTEN/MMAC1遺伝子異常の検索を行った。 PTEN遺伝子異常は2例にしか認められず、各々の症例は下大静脈と後腹膜発生の平滑筋肉腫であった。腹腔内発生の平滑筋肉腫3例中2例にPTEN遺伝子異常を認めたことになり、四肢発生の平滑筋肉腫10例にはPTEN遺伝子異常を認めなかった。腹腔内発生平滑筋肉腫は四肢発生例に比較して有意に予後不良でありPTEN遺伝子異常の観点から見ると、腹腔内発生例は四肢発生例とは違う発癌機構を有している可能性が示峻された。(Saito et al. In J Cancer, in press) 2.胞巣状軟部肉腫におけるhMLH1/hMSH2発現異常とそのメカニズム 16例の胞巣状軟部肉腫を臨床病理学的に解析し、パラフィン標本が使用可能であった11例よりDNAを抽出し癌抑制遺伝子ないし癌遺伝子であるp53,APC, E-cadherinおよびbeta-cateninの遺伝子異常を調べた。さらにDNAミスマッチ修復遺伝子であるhMLH1およびhMSH2のプロモーター領域のメチル化と蛋白の発現を検索した。臨床病理学的には核異型度が唯一の予後不良因子であった。p53の遺伝子変異は4例に認められ、E-cadherin, APC遺伝子変異はそれぞれ1例づつに認められた。Beta-cateninの遺伝子異常を有する症例は一例もなかった。hMSH発現減弱は2例に、hMLH1発現減弱は3例に認められ、後者の3例は全てp53ないしAPCの遺伝子変異を有する症例であった。これら癌抑制遺伝子異常とhMLH1発現減弱の間には有意な相関関係が認められた。hMLH1およびhMSH2のプロモーター領域のメチル化は全例で認められなかった。従ってhMLH1ないしhMSH2の発現減弱は胞巣状軟部肉腫における癌抑制遺伝子異常を引き起こすのに重要な役割を演じていると考えられた(投稿中)。
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