研究概要 |
1.ヒト胃癌におけるグルコース・トランスポーター1(Glut-1)の発現と癌の転移と悪性度、患者の予後との相関性について明らかにし、発表した(Cancer,2001)。また、より広くがんのグルコース代謝を調べるために新たにGlut-1,Glut-3,Glut-5に対する抗体を作製した。 2.ヒト胃癌における脂肪酸合成酵素(FAS)の発現の特性について発表した(Histopathology,2002)。FASは癌部のみならず、腸上皮化生、腺腫などの前癌病変さらには再生上皮にも発現することを確認した。 3.ヒト食道癌でもFASは軽度異型上皮からすでに高発現していた(投稿中)。 4.ヒト膵癌40例中39例にFASの高発現を認めた。しかし、腺管上皮過形成、腺腫様病変ではFASの高発現はみられず、胃・食道とは異なる発現様式を示すことが分かった。 5.甲状腺未分化癌株4株はいずれもFASを発現しており、いずれもFASの阻害剤であるセルレニン処理により細胞死を遂げる。形態学的にはアポトーシスおよびネクローシスの像を呈し、細胞内ATP濃度の著減と平行して細胞死がみられた。 6.adriamycin, AraC, vincristineに耐性の骨髄性白血病株(KY-821とKF-19)は、親株よりもFAS阻害剤であるセルレニンに強い感受性を示し、ほとんどの細胞がアポトーシス・ネクローシスを示した。一方、慢性髄性白血病の急性転化(赤芽球性白血病)株ではこのような現象がみられなかった。抗癌剤耐性株の治療法の手がかりの一部が得られたものと考えられる。 7.ラット転移実験モデルで、脈管内癌細胞と、脈管外脱出癌細胞によって形成された微小転移巣とでFASの高発現が認められ、脈管内移送時と転移形成の初期増殖巣でFASが発現することが判明した。
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