研究概要 |
1.脂肪酸合成酵素(FAS)は、食道・胃では前癌病変から、また、膀胱でも早期の癌(dysplasia/carcinoma in situ)から高発現する。一方、膵癌では前癌病変部にFASの発現はほとんどみられず、癌部のみに強く発現する。 2.膀胱癌ではFASの発現とKi-67標識率の組み合わせが、また軟部肉腫ではFASの発現が予後不良の因子となる。 3.結腸癌株、未分化甲状腺癌株はセルレニン処理により細胞内ATP量の低下とともにネクローシス、アポトーシスをきたす。 4.adriamycin, AraC, vincristineに耐性の骨髄性白血病株(KY-821とKF-19)は、親株よりもFAS阻害剤であるセルレニンに強い感受性を示し、ほとんどの細胞がアポトーシス・ネクローシスを示した。一方、慢性髄性白血病の急性転化(赤芽球性白血病)株ではこのような現象がみられなかった。抗癌剤耐性株の治療法の手がかりの一部が得られたものと考えられる。 5.セルレニン処理によりFASの機能を阻害すると、acyl Co-A synthase, lysophosphatidic acid acyltransferase-β、N-myristoylacyltransferase-2の発現の低下、middle chain acyl-CoA dehydrogenase、lysophophatidic acid acyltransferase-αおよびN-myristoylacyltransferase-1およびhexokinase-1の発現が亢進する。 6.転移モデルにおいて、脈管内癌細胞にFASの強発現がみられ、これは、癌細胞の脈管内移動のエネルギー源として脂肪酸を用いることを強く示唆する。 7.脂肪酸結合蛋白(FABP)の肝型(L-FABP)は、胃癌・肺癌ではFASと類似の発現様式を示す。 8.心筋型(H-)FABPは、胃癌では癌のプログレッションに相関し、予後因子の一つである。 9.グルコーストランスポーター1(Glut-1)は、胃癌、肺癌で予後因子の一つである。
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