研究概要 |
(1) 散発性大腸癌45例、胃癌62例を対象にミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析を行い、以下の結果を得た。i)非翻訳領域内の(C)n多型配列において、microsatellite instability(MSI)が認められた(大腸癌20例,44%;胃癌10例,16%)。ii)翻訳領域内の遺伝子変異は大腸癌7例、胃癌6例において認められた。その7例中6例および6例中4例は同時にmtDNAのMSIを有した。iii)胃癌ではIntestinal typeの組織型において高頻度にmtDNAのMSIが検出された。以上より、mtDNAのMSIが非特異的な現象ではなく、核同様のミスマッチDNA修復機構の異常を反映する可能性、そしてミトコンドリア遺伝子の変異が特定の腫瘍で積極的な役割を果たす可能性が示唆された。 (2) 酵母で証明されているミトコンドリア特異的ミスマッチ修復遺伝子MSH1の塩基配列をもとにプライマーを設計した。ヒトゲノムDNAを鋳型としPCRによるスクリーニングを行った結果、258bpの増幅断片が得られた。このDNA断片の塩基配列は酵母MSH1遺伝子およびヒトMSH2遺伝子の塩基配列と高い相同性を示した(各62%,59%)。しかしながら、ヒトの各組織における同DNA断片の発現はNorthern hybridization、RT-PCRの両法では検出されず、MSH1遺伝子の偽遺伝子である可能性が考えられた。現在、他の方法を用いてヒトMSH1遺伝子の検索を試みている。
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