研究概要 |
特発は間質性肺炎(Usual interstitial pneumonia,以下UIPと省略)に高率に合併する肺癌発生の機序を解明するため,UIPに合併した肺癌とUIP非合併肺癌のp16遺伝子プロモーター領域のメチル化の比較検討を施行した.p16メチル化の頻度は,UIP合併肺癌81%(21例中17例),UIP非合併肺癌で46%(85例中39例)で,UIP合併肺癌では高率にp16メチル化が生じていることが判明した.そこで,UIPの改変気腔部の各化生上皮(2型・細気管支上皮,扁平上皮化生上皮,気管支上皮)をLaser Capture Microdissectionし,同様に検討してみたが全く認められなかった.通常の肺癌発生においては,p16遺伝子プロモーター領域のメチル化は早期に生じていると言われているが,UIP合併肺癌においては相対的に後期に生じている可能性を示している.改変気腔における化生上皮のp53やK-ras遺伝子の変異について検討中である. 一方,ベンツピレン等の発癌性芳香族炭化水素の代謝・解毒に関与する酵素遺伝子の多型性(CYP1Al,glutathione s-transferase M1,microsomal epoxide hydrolase)の検討では,肺癌合併UIP群はglutathione s-transferase M1陽性率が,健常者群との差はないが,肺癌非合併UIP群やUIP非合併肺癌群に比べて有意に高いことが判明した.glutathione s-transferase M1の遺伝子多型性による体質的素因の相違は,UIPにおける癌発生の予測危険因子として有用である可能性が示唆されるためさらに症例数を追加し検証する.
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