研究概要 |
Wilms腫瘍関連遺伝子WT1の腎障害・泌尿生殖器器官形成異常およびWilms腫瘍発生への関与を明らかするために,散発性Wilms腫瘍、Wilms腫瘍関連奇形症候群であるDrash症候群症例などについてWT1遺伝子の解析を行い以下の知見を得た。 1.家族性Wilms腫瘍症例におけるWT1遺伝子変異 家族性Wilms腫瘍症例におけるWT1遺伝子変異の報告は少なく、特に本邦ではこれまで確認された症例はなかった。今回の解析で、我々は日本では初めて家族性Wilms腫瘍の親子において、WT1の機能的に重要な部位の変異を同定した。このことは家族性Wilms腫瘍の発症に関してもWT1遺伝子異常が関与していることを明らかにしたものであり、また、WT1変異のpenetrationについて非常に重要な意義を持つものと考えられる。 2.小児進行性腎障害症例におけるWT1遺伝子解析 小児進行性腎障害症例(Drash症候群・Frasier症候群および腎障害単独症例)において、WT1のgermlineにおける変異を解析した。その結果Drash症候群ではWT1遺伝子の機能に重要な部位のmissense mutationが同定され、Frasier症候群においては、そのすべてでintron 9 splicing donor siteのpoint mutationが認められた。また腎障害単独症例においても、Drash症候群・Frasier症候群と同様なWT1遺伝子の変異を同定した。これらWT1変異症例の臨床像は、その変異様式によって腎障害の経過、性分化異常の程度、Wilms腫瘍発生の点で異なっていた。このことより小児の進行性腎障害症例においてWT1の解析を行うことは臨床経過を推定するのに有用であることが示された。(Takata,A.Kikuchi,H.et al.J Med Genet2000)
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