研究概要 |
Wilms腫瘍関連遺伝子WT1の腎障害・泌尿生殖器器官形成異常およびWilms腫瘍発生への関与を明らかにするために、腎障害・泌尿生殖器奇形を有する症例およびwilms腫瘍においてWT1遺伝子の解析を行い以下の知見を得た。 1.特異な腎組織所見を有するWT1変異Drash症候群患者の発見 腎障害・性分化異常を伴うDrash症候群患者において、新たなWT1変異様式を同定し、2000年に他の症例と併せて報告した(Takata, A. Kikuchi, H. et al. J Med Genet 2000)が、その症例の解剖時腎組織所見について検討を加えた。その結果、embryonal hyperplasia of Bowman's capsuleを認め、この発生に対するWT1変異の関連が示唆された。このことは、WT1の腎組織形成における役割を考える際に興味ある所見である。(Fukuzawa, R. Kikuchi, H. Hata, J. et al. 投稿準備中) 2.泌尿生殖器奇形にwilms腫瘍を伴う症例における新たなWT1変異様式の同定 泌尿生殖器奇形にWilms腫瘍を伴う症例で、WT1 intron 7 splicing donor site変異を同定し、この変異によってexon7全体がsplice outされ、frame shiftを生じzinc fingerが全く形成されないことを確認した。このような変異様式はこれまで報告がない。本症例では腎障害を伴っていないことより、この変異はDrash症候群における変異とは腎器官形成に及ぼす影響が異なることが示され、これまでの知見に加えてさらにWT1変異様式と腎泌尿器器官形成異常の病態との間に強い関連があることを意味するものと考えられた。(Sakamoto, J., Takata, A., Fukuzawa, R., Kikuchi H., Hata, J., et al., Pediatr Res 2001)
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