研究概要 |
形質や組織分化能を考慮にした胃癌の研究成果を以下2つのテーマで報告する。 I.高分化型早期胃腺癌の粘液形質と遺伝子解析:高分化型早期胃腺癌を胃型、腸型、両形質混在型腺癌に分類し、遺伝的変化の解析を行った。(1)粘膜病変で高分化、粘液形質を有する腫瘍でも、genetic progressionに伴い、分化度が低くなり、形質発現も弱くなる。(2)単一腫瘍クローンで両形質分化能を有する細胞が存在する。3)混合型形質でち胃型と腸型形質が、部位毎に分かれる症例がある。腫瘍クローンのgenetic progression/genetic divergenceに基づく不均一な亜型クローンの派生による。(4)背景腸上皮化生部位、及び腫瘍各部位で広範囲にhMLH1のメチル化を検出した。正常粘膜でもメチル化の認められる症例も存在した,以上、分化型の腫瘍にも胃型、胃型腸型形質を持つものが多数存在し、その形質発現パターンは、腫瘍クローンの持つ多分化能や、腫瘍進展過程における遺伝子変異のgenetic progression, genetic divergenceなどの現象による不均一な腫瘍亜型クローンの出現に基づく事が明らかとなった。混合型形質を不す腫瘍の背景には、粘膜の障害に伴い、不完全型腸上皮化生を示し両形質への分化能を有するクローン由来の可能性が示された。さらに、分化型癌から進展して、浸潤進行癌、低分化型癌などへ至る経路も示唆された。 II.AFP産生性胃癌の形質と遺伝子変異:胃癌には希にAFP産生性の癌病変部が共存することがある。組織学的にはenteroblastic/hepatoid patternなどの像が混じる。今回、同腫瘍のLOH解析を行い、腫瘍成分の遺伝的特徴と組織分化能との関係を明らかにした。(1)単一クローン由来であり広範なLOH(FAL=0.709)を有する腫瘍である。(2)腫瘍成分の部分に限ってのLOHが13qその他の染色体領域で認められた。単一クローン由来でも、genetic progression/genetic divergenceがAFP産生能および多彩な組織分化能獲得に影響している事が明らかとなった。
|