研究概要 |
心筋架橋とアテローム硬化度・心筋梗塞の発生状況を一段と明確にして、臨床的な意義の結論を得る目的で、心筋架橋の有無に依らず、150例の左冠状動脈前下行枝を蒐集した。又、平成12年度及び13年の免疫組織化学で注目されたtissue factor,tissue plasminogen activator,plasminogen activator inhibitor-1につき、心筋架橋部の冠状動脈内膜及びその近位・遠位の内膜肥厚度と内皮細胞におけるこれらの蛋白の発現程度を比較検討した。 [結果]心筋架橋の左前下行枝における位置、心筋架橋の長さ、厚さと内膜肥厚度への影響を検討したところ、心筋架橋の長さと厚さは共に有意な相関を示し、心筋架橋が長い或いは、厚い場合は、心筋架橋の冠状動脈硬化抑制に及ぼす影響も有意に大きかった。又、心筋架橋の位置が左冠状動脈入口部に近いほど、心筋架橋は長く、又厚みも増す傾向がみられた。又、心筋架橋部の内皮細胞には、心筋架橋の入口より近位部及び出口より遠位部の内皮細胞K比べて、血液凝固・線溶に関する上記の蛋白の発現は、架橋部の内皮細胞にはずり応力が高いために抑制されており、これによりアテローム硬化の抑制が生じるものと考えられた。 これらの所見から、心筋架橋部の内皮細胞には、ずり応力が高くなることによって、アテローム硬化の抑制が生じ、この過程は、又、心筋架橋の解剖学的特性によっても規制を受けていることが結論される。
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