本研究の目的はCEACAM1のcDNAを組み込んだ、nvelopeに抗CEA scFvを持つレトロベクターGPEscFv-envを用いてCEA産生大腸癌細胞に特異的にCEACAM1を発現させ、CEACAM1の癌抑制効果を調べることであり、これまで以下の結果を得た。 1.ヒト白血球よりCEACAM1のcDNAをクローニングし、amphotropicレトロベクターpLNCXに組み込みpLNC-BGPaを得た。pLNC-BGPaでamphotropic packaging cell line PA317をtransfectし、その培養上清を用いGPEscFv-envにBGPa遺伝子の導入を試みた。ベクターの構築、packaging cellの変更等の試行錯誤の末、弱いタイターながら目的のクローンGPEscFv-env/BGPaが得られ、現在CEACAM1のタンパクの発現を解析中である。 2.GPEscFv-envがCEA発現細胞に特異的に遺伝子を導入できるかどうかを調べるため、蛍光色素遺伝子あるいは自殺遺伝子iNOSを組み込んだGPEscFv-envを、培養した、あるいはヌードマウスに移植したヒトCEA産生胃癌細胞に投与した。その結果GPEscFv-env投与群では蛍光色素あるいはiNOSの効果により蛍光発光あるいは癌抑制効果がみられ、この系がin vitroでもin vivoでも有効であることが示唆された。 3.CEACAM1が癌抑制効果を示すにはCEACAM1のhomotypicな接着が重要と考えられるのでCEACAM1の細胞接着活性に重要な構造を調べるために、CEACAM1の様々なmutantを作製し、その接着能を比較した結果、少なくともN端の4ケ所のアミノ酸残基が重要であることがわかった。 4.今後得られたGPEscFv-env/BGPaをCEA産生癌細胞に投与し、その癌抑制効果をin vitroおよびin vivoで解析していく予定である。
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