本研究では、癌抑制遺伝子の候補として最近見い出されたh-Warts/LATS1遺伝子の変異の有無を種々のヒト軟部肉腫50例を対象として検索を行ってきた。今年度は、一昨年度に明らかにしたh-Warts/LATS1遺伝子の構造と遺伝子バンクに登録されている遺伝子配列の情報を基に、インターネットオンライン上で利用可能な遺伝子プロモーター検索プログラムを用いてこの遺伝子の5'プロモーター領域の候補を推定した。同部がCpG配列に富む領域であることを確認した後に、この領域におけるCpG配列のメチル化の有無を、遺伝子発現が現弱ないし消失していた7例と遺伝子発現を確認できた6例を対象としてメチル化配列特異的なpolymerase chain reaction (PCR)法を用いて検索した。その結果、遺伝子発現の消失していた6例ではCpG配列のメチル化を認めたが、発現減弱例を含む遺伝子発現の見られた7例においてはメチル化は見い出されなかった。以上のデータを含むこれまでの結果から、遺伝子欠失や点突然変異を含む種々のh-Warts/LATS1遺伝子変異がヒト軟部肉腫の一部の例で認められ、特に5'プロモーター領域におけるCpG配列のメチル化に基づく遺伝子発現の消失が、それらの変異の中では高頻度に認められることが示された。したがってh-Warts/LATS1遺伝子がヒトにおける癌抑制遺伝子の一つであることが一層支持された。
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