当初の予定に従って市販の抗NF-Ya抗体(Chemicon社)を用いて、通常のホルマリン固定、パラフィン切片にて染色性の検討を行った。染色条件はマイクロウェーブ処理の有無、カゼインブロックの有無、抗体の希釈倍率(100、250、500倍)で検討し、病理組織は比較的固定時間の短いと考えられる、前立腺針生検(10症例)、乳腺生検(10症例)、消化管ポリペクトミー(20症例)材料を使用した。発色には通常のLSAB法(DAKO社)を使用した。 結果は、マイクロウェーブ処理、カゼインブロックの有、抗体の希釈倍率250倍の条件が染色性、再現性ともに良く、細胞核に強く染色された。特に前立腺癌での染色性が良好で多数の癌細胞の核に陽性像が観察され、正常前立腺組織と比較して陽性率が高い可能性があることが示唆された。また、低分化な前立腺癌での陽性率は分化の良いものに比較して、高いことも示唆された。乳腺組織では良好な染色は得られなかった。消化管では、胃、大腸では有意な染色性とは言えなかったが、早期食道癌(扁平上皮癌)部分では、周辺の正常上皮の比較して、腫瘍細胞の核での陽性率が高い傾向がうかがえた。 腫瘍の種類、数ともに検討症例を蓄積し、NF-Yaについての更なる検討と、既知の増殖マーカーとの比較を次年度に行う予定である。
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