今年度にはNF-Yに加えて、使用頻度の高い細胞増殖マーカーであるProliferating nuclear antigen(PCNA)とMIB-1による免疫染色を行い、NF-Yによる染色とを比較した。前年度の結果では、正常胃粘膜の増殖帯である腺頚部ではNF-Yの発現頻度が高く、多くの細胞核が陽性であった。同様にPCNAやMIB-1陽性核も腺頚部に観察され、NF-Yの分布とほぼ一致していた。胃癌組織においてもPCNA、MIB-1、NF-Yは高頻度に陽性であり、同様の染色態度を示したことより、NF-Yが細胞増殖の新しいマーカーと成りえることを示唆している。胃癌の壁深達度による陽性核数の変化は観察されなかった。問題点は、Catalyzed signal amplification systemによる免疫染色の手技の煩雑さと、ときに観察される強い共染であった。Cdc2については良好な免疫染色が得られなかったため、抗体の選択や検出方法等の再検討が必要と考えられた。 ヒト胃癌細胞株(MKN7、MKN28、NUGC4)を用いた細胞学的アプローチでは、cdc2プロモター活性がNF-Yのdominant negative mutantによって濃度依存性に抑制されることを確認した。これらの胃癌培養細胞の核抽出物をもちいてcdc2遺伝子のNF-Y結合配列との結合活性を調べる予定であったが、核抽出物を得ただけに留まっており、実験は遅延している。今年度で、助成は終了であるが今後も追加実験を行い、論文作製予定である。
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