研究課題/領域番号 |
12670186
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研究機関 | (財)癌研究会 |
研究代表者 |
佐藤 之俊 (財)癌研究会, 癌研究所, 研究員 (90321637)
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研究分担者 |
中川 健 (財)癌研究会, 癌研究所, 研究員 (60085595)
西尾 誠人 (財)癌研究会, 癌研究所, 研究員 (00281593)
石川 雄一 (財)癌研究会, 癌研究所病理部, 主任研究員 (80222975)
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キーワード | 肺癌 / 職業癌 / 吸入発癌物質 / クロム / LOH / 異形成 / 経時的変化 |
研究概要 |
2年間の研究期間の初年度として本年は、症例の選択、肺内クロム定量結果の確認、パイロットスタディとして臨床経過の判明している症例のマイクロサテライトマーカーを用いたLOH検索を行った。 症例の選択として、当初は凍結材料の得られたものすべて(10例)、対照症例としては、年齢・性別をマッチさせた同期間の肺扁平上皮癌切除例20例を選ぶ予定であった。しかし、その後の検討で、対象例としてはより多くの材料が得られる肺癌切除検体を用いることとしたため、4例を選択した。 まず、パイロットスタディとして、対象例のうち病理解剖の行われた1例について、埼玉県立がんセンター研究所病理部(土屋永寿部長)でのLOH検索の結果が得られた。本例では経時的に第1から第9番目の重複肺癌が観察されている。そのうち4病巣(第4から7癌)のLOH解析が行われた。なお、第4癌(高度異形成→癌→放射線治療後の扁平上皮化生)と第5癌(癌→放射線治療後扁平上皮化生)はそれぞれの病変を解析した。 第4癌は、異形成が3pと17pでLOH(+)、癌が両方で(-)、扁平上皮化生が17q(-)であった。第5癌では、癌が3p、9q、17pでLOH(+)、扁平上皮化生が3p(+)、9q(-)、17p(-)で、かつ癌と扁平上皮化生では3pの欠失バンドが異なっていた。第6癌は、3pがLOH(-)、9qが(+)、第7癌は、3p、9q、17pでLOH(-)であった。解析した4病変すべてにおいてLOHパターンが異なり、さらに第4癌では異形成と癌ですらLOHが異なっていた。 以上より、検索したクロム作業従事者の気管支は上皮全体にわたって発癌準備状態になっており、何らかの因子が加わることによって複数部位から多クローン性に癌が発生したものと考察された。 今後は、他症例の手術材料を用いて同様の検素を試みる。
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