節外性リンパ腫の中心をなす粘膜関連リンパ組織型B細胞リンパ腫(MALTリンパ腫)は発生頻度が高く、明確な疾患単位を形成する。しかし、その腫瘍発生での分子病態の解明は不明のままであった。我々は、t(11;18)染色体転座がMALTリンパ腫の原因の一つである可能性を報告してきた。そして外科的手術材料を用いてt(11;18)切断点を世界に先駆けて公表した。さらに18番染色体上の責任遺伝子の同定に成功し、未知の遺伝子であることからMALT1と命名した。一方、11番染色体上の遺伝子は既知のAPI2であった。t(11;18)染色体転座によるAPI2-MALT1キメラ遺伝子の形成が、MALTリンパ腫の発生に深く関わるものと推定された。当該研究期間中にRT-PCR法あるいはFISH法を用いてAPI2-MALT1キメラ遺伝子のパラフィン切片からの検出システムを開発すると共に、その医学的意義についての解明を進めた。その結果、胃MALTリンパ腫においてはAPI2-MALT1キメラ遺伝子の検出がHelicobacter pylori除菌療法に対するMALTリンパ腫の反応性を予測し得る分子マーカーであることを初めて明らかにした。一方、これら有為なデータの解析において強力な臨床治療研究グループとの提携が不可欠であった。また、それら治療研究グループの育成と連携において、本邦は欧米に比べて未だ立ち遅れた状況にあることが痛感された。今後の研究の展開を計る上での幾つかの課題を残した研究期間であったとも云える。
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