本年度は「障害児(者)の新鮮脳組織の採取と確保」、「既保存剖検脳組織を用いた加齢性変化の評価法の確立に関する検討」、「促進老化のモデルを用いたユビキチン発現の検討」をおこなった。 1.障害児脳組織の確保:「脳および組織保存機構」として愛知県コロニー倫理委員会、および愛知県の承認を受け、脳および他の臓器、障害児外来患者血液からのDNA採取と保存をおこなった。平成13年2月1日現在での確保は96症例(臓器24例、DNA抽出72例)である。今後、促進老化の指標となる項目について検討をする予定。 2.加齢性変化の評価法の検討:30歳代、60歳代の障害者(児)の症例を数例ずつ抽出し、海馬に関してタウ蛋白、ユビキチン蛋白の免疫染色態度と、血管周囲細胞群(以下PVCと略す、Mato cellも含む)との相関に関してパイロットスタディをおこなった。促進老化の評価を試みたが、神経原線維変化(NFT)とPVCとの相関は現時点での検索症例数では明らかには出来なかった。 3.促進老化のモデルを用いた老化の傍証予備実験:剖検症例は原疾患、病悩期間、死亡時年齢等、非常にヘテロである。純系の促進老化のモデルマウス(SAMP10)の脳をユビキチン抗体にて検索した。学習障害を示すSAMP10では、ユビキチン化された細胞質内封入体が、内嗅領域と扁桃体前部に始まり、海馬や嗅球へと拡がっていた。分布のあり方がヒト脳におけるNFTのそれに類似していた。
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