心身障害児(者)は「早く年をとる」とも言われ、剖検例でも脳を含めて老化の徴候とも言うべき年齢不相応な形態学的肇化がしばしば見られる。 そこで、愛知県コロニー脳及び組織保存機構に登録されている症例を含めて、10歳代18例、20歳代8例を含む15歳以上の36症例について、海馬、海馬傍回、青斑核でのAT8陽性の過剰リン酸化タウ蛋白(NFT、Neuropile threads)、抗ユビキチン抗体陽性像、ストレス蛋白(αBクリスタリン、Hsp27、Hsp70)の発現頻度などを検討した。 その結果、AT8陽性像は10歳代でも16.7%、30歳代は50%に、40歳を過ぎるとほとんどの症例に過剰リン酸化タウの蓄積が見られた。福山型筋ジストロフィー症など、NFTが早期から出現することが知られている疾患を除外しても、10歳代で6.3%、20歳代で43%にAT8陽性像を認めた。また、抗ユビキチン抗体陽性像はAT8の所見に類似した像を呈する一方で、神経原線維変化とは別に雪の結晶類似の構造物(仮称:UPSS=Ubiquitin Positive Snow-like Structure)が広範に散見された。その本態はMicrogliaなのかSwollen oligodendrocyteなのかの鑑別が今後の検討課題として残った。 一方、これら異常タウやUPSSなどが出現している症例でも老人斑は全く認められず、一般に見る高齢老人の脳とは少々異なっていた。また、αBクリスタリンは陽性像が見られるものの、Hsp27、Hsp70ではほとんど陰性で、症例の積み重ねと生化学的検索が必要である。
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