研究概要 |
平成12年度はL-セレクチンを介したリンパ球のホーミング現象が急性拒絶反応の際にみられるリンパ球の浸潤に関与しているか否かを組織化学的に検討した.8例の肝移植患者から移植直後(time-zero biopsy)ならびに急性拒絶反応時に採取された肝生検組織のホルマリン固定・パラフィン切片に対し,L-セレクチンのリガンドである硫酸化された糖鎖を認識する単クローン抗体,MECA-79で免疫染色した結果,time-zero biopsyではMECA-79は小葉間胆管上皮とごく僅かに反応するのみであったが,急性拒絶反応を示した肝組織でその染色性は増強した.また8例中2例の門脈域では,CD34陽性の血管内皮の一部にMECA-79とも反応する血管内皮が認められた.このCD34(+)/MECA-79(+)の血管内皮はtime-zero biopsyでは見出されないことから急性拒絶の発症にはL-セレクチンを介したリンパ球のホーミング現象が関与する可能性が強く示唆された.次に,L-セレクチンのリガンド糖鎖である6-sulfo sialyl-Lewis Xの合成に重要な硫酸転移酵素,LSST2が実際にMECA-79陽性の胆管上皮や血管内皮で発現しているか否かを検討するため,LSST2 mRNAを特異的に認識するRNAプローブを作製し,in situ hybridization法で検討した.しかしmRNAの発現量が少なく,明らかな陽性所見を得ることができなかった.現在LSST2に特異的に反応する抗ペプチド抗体を作製しており,次年度はこの抗体を用いてさらに解析を進める予定である.
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