研究概要 |
平成12年度の研究成果により,急性拒絶反応時にMECA-79抗体で検出されるperipheral node addressin(PNAd)が門脈域の血管内皮に出現することを見出し,急性拒絶反応にL-セレクチンを介したリンパ球のホーミングが関与する可能性が示唆された.平成13年度はL-セレクチンのリガンドである6-sulfo sialyl Lewis Xがコア2ο-グリカンの非還元末端に存在することから,コア2ο-グリカンの合成を触媒する糖転移酵素,core2β6GlcNAcT-I (C2GnT-I)に対する抗ペプチド抗体を作製し,免疫組織化学的に解析した.その結果,PNAd陽性の血管内皮にC2GnT-lは発現しておらず,また6-sulfo sialyl Lewis Xを含むLewis X関連糖鎖を認識する単クローン抗体,HECA-452とも反応しなかった.一方,Burnham Institute,福田穰教授との共同研究で伸長型コア1ο-グリカンの合成に重要な糖転移酵素,core1 extensionβ3GlcNAcTのcDNAを単離し,PNAdがGalβ1→4(sulfo→6)GlcNAcβ1→3Galβ1→3GalNAcであることを証明した.また,コア2ο-グリカンのみならず,この伸長型コア1ο-グリカンの非還元末端側にも6-sulfo sialyl Lewis Xが生成され,L-セレクチンのリガンドとなり得ることを示した.以上の結果より,急性拒絶反応では門脈域の血管内皮にPNAdは発現し得るが,その非還元末端に6-sulfo sialyl Lewis Xは合成されず,急性拒絶反応の病態形成にL-セレクチンを介したリンパ球のホーミングが積極的に関与している確証は得られなかった.
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