研究概要 |
がん原遺伝子c-kitは受容体型チロシンキナーゼをコードしている。我々は、消化管ストローマ細胞腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor, GIST)の多発する家系を見つけ、この家系にはその原因と考えられるgermlineにおけるc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異が見られることを示した。またこの家系ではGISTが多発するほか、その前駆病変と考えられるカハールの介在細胞(Interstitial cells of Cajal ; ICCs)の過形成像がみられた。germlineにおけるc-kit遺伝子の突然変異がマウスにおいてもICCsの過形成を基盤とした多発性のGISTを引き起こし、ヒトの家族性多発性GISTのモデルとなるかどうかを調べるために、機能獲得性c-kit遺伝子変異をマウスに導入することを試みた。ジーンターゲティング法によりノックインマウスを作る予定であるが、現在まだターゲティングベクターの作成段階であり、これに先立って今回はまず傍細胞膜領域のタイプの突然変異を持つトランスジェニックマウスを作成した。 GIST症例の検討過程で、キナーゼドメインIIの突然変異を持つヒトの家族性多発性GIST家系をみつけたので、その解析を行った。この突然変異も機能獲得性の変化であることがわかり、突然変異を持つ患者はICCsのびまん性過形成を基盤とした多発性GISTを発症していた。患者のほとんどが明らかな食道の狭窄性病変を伴わないにも関わらずアカラシア様の嚥下困難を示し、この原因は胃食道接合部におけるICCsの過形成ではないかと考えられた。今後このタイプのノックインマウスやトランスジェニックマウスも作成したい。
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