研究概要 |
平成12年度においては、HTLV-IとーIIウイルス産生株細胞におけるT細胞受容体発現状況について免疫電顕法により検討し、これらウイルス産生細胞は機能不全状態であると考えられた。その結果、T細胞受容体は、それらの亜分画も含め発現異常状況であることを明らかにした。また、ヒトヘルペスウイルス(HHV)の8型に関しては、HHV-8型粒子産生がわずかに認められるのみのprimary effusion lymphoma(PEL)由来細胞株のTPA処理により、核内粒子、胞体外成熟粒子が容易に電顕観察され、それらの微細構造につき報告し、他のHHV(4,5,6,7型など)との比較検討を行った。 平成13年度は、HHV-6型の検討を重点的に行った。HHV-6は粒子としての観察が容易ではなく、細胞株においてもウィルスゲノムを有していても粒子産生が認められないことが多い。今回は、成人T細胞白血病患者由来T細胞株(MT-4)に、HHV-6型を感染させるとHHV-6型ウイルス特異蛋白発現が認められるという事実に基づき、HHV-6型の電顕観察を試みた。その結果、感染状況はlyticであるもののHHV-6産生は顕著に認められた。核内、核膜腔内、胞体内、胞体外粒子が観察された。核内粒子は核膜周囲腔に芽出した後に胞体外成熟粒子となるか、核膜孔を通過して胞体に移行し、胞体外粒子として成熟するかの2通りの可能性を見出した。成熟型粒子でも、これら2通りの成熟方法が示唆される形態的相違が認められた。即ち核膜孔を通過したものはテグメント部の中間層が不明瞭であり、一方、核内膜被覆により芽出するものは明瞭に認められた。他のHHV粒子(4、5、7、8型)との比較検討を行った。また、MT-4細胞株はHTLV-1産生株でもあり、C型であるHTLV-1粒子もしばしば同時に観察された。HHV-6の微細構造検索に関する投稿論文は目下準備中である。ウイルス産生細胞における更なる検索のために、これらと併行して細胞周期制御やp53を中心とした癌抑制遺伝子関連産物をヒト腫瘍において検索した。
|