我々は、PrP遺伝子欠損マウスにはalternative splicingにより生じたmRNAが過剰発現していることを見つけ、塩基配列を決定してみるとPrP類似のタンパクをコードする新たな遺伝子(Dopple/PrPLP遺伝子)であることがわかった。この遺伝子は、脳では生後6日目をピークとして脳血管内皮細胞に発現していることがわかった。一方、睾丸では、生後2週目までは、将来的にはリンパ管に分化していく間葉細胞に発現しているが、生後3週目からは、spermatogenic cycleの第IV〜VI日目の精粗細胞に強く発現するようになる。これらの事を考え合わせると、PrPやDopple/PrPLPは、blood-barin-barrierやblood-testis-barrierの形成や機能に関わっている可能性が示唆された。平成13年度では、alternative splicingにより生じたDopple/PrPLPがどのような影響を及ぼすかをPrP遺伝子欠損マウスの長期観察を行った。結果、Dopple/PrPLPの過剰発現による神経細胞障害の直接的な影響は認められなかったもののグリア細胞の活性化を促すことが明らかとなった。この事は、PrPやDopple/PrPLPの機能のさらなる解明と共にプリオン病をはじめとする神経変性疾患にどのように関わっているかを知る上で興味深い所見であるが、更に、知見を得るためにDopple/PrPLPのtransgenic mouseを作成して検討している。
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