研究概要 |
私は、成熟ラット肝臓より肝幹細胞の一種と考えられる小型肝細胞を分離培養し、成熟肝細胞に分化させ、肝非実質細胞との相互作用により3次元的な立体構造を構築することを見いだした。小型肝細胞はコロニーを作るように増殖し、肝上皮様細胞や星細胞に囲まれるようになるとコロニーの上に盛り上がるように大型の細胞が出現する。そのような立体的構造を呈する部分の細胞は成熟肝細胞に豊富に発現していることが知られている転写因子のHNF4,HNF6,C/EBPαなどを強く発現していることが分かった。2次元的に増殖している小型肝細胞に人為的に基底膜の細胞外基質を多量に含むマトリゲルを薄く載せると3次元的な立体構造を急速に誘導でき、小型肝細胞の成熟化は細胞外基質、特に基底膜成分の一部又は全てがあることが必要で、ラミニンやタイプ4コラーゲンが単独に存在しても成熟化は誘導されない。また、培養一週間ぐらい経った小型肝細胞のコロニーは、コロニーごと分離することが可能で新しいディッシュに再播種すると小型肝細胞は急速に増殖し、1ヶ月ほどでコンフルエントになる。この実験条件では、非実質細胞の混入が少ないために3次元化は起こりにくい。この細胞にマトリゲルを載せると同様に成熟化を誘導することができる。つまり、この実験結果は、小型肝細胞のより純化が可能になり増殖と成熟化が培養皿上で調整可能になったことを示している(論文投稿中)。 小型肝細胞を生体内に移植し組織化させる実験を行うためには多量の小型肝細胞を用意する必要がある。一個体から採取可能な小型肝細胞数は限られているため、増殖させた小型肝細胞を保存する方法の確立は必須である。我々は、一年以上凍結保存した小型肝細胞を再び増殖させることに成功した。50%以上の生着率があり、生着すると小型肝細胞は急速に増殖を始め、2週間でコロニーの面積にして約7倍になる。アルブミンの産生も培養経過と共に増える(培養25日で約40μg/ml/48h)。培養を続けるとほぼコンフルエントになる。現在、凍結保存した細胞の移植実験も準備中である。
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