研究概要 |
マウス自然発生乳癌から樹立した低浸潤性高転移株(MCH66)の「浸潤能に依存しない血行性転移」のメカニズムを明らかにするために、高浸潤性高転移株(MCH416)およびMCH66から選別した非転移性クローン(MCH66C8)との比較研究を行った。MCH66の細胞生物学的な特徴として1)gelatin分解活性が低い、2)in vivoの増殖性が高い、3)血管新生活性が高い、4)移植腫瘍内に類洞血管の発達が著しい、5)類洞血管の発達と肺転移結節数が相関する、が明らかとなり、「浸潤能に依存しない転移」に類洞状血管を誘導する分子が関与することが示唆された。RT-PCR法による血管新生因子の解析ではpleiotrophinがMCH66に特異的な高発現を示していた。Suppression Subtractive Hybridization (SSH)法によりMCH66に高発現するmRNAとして10の既知遺伝子と5つのESTsをクローニングした。以上の結果はAmerican Journal of Pathology (in press)で報告する。 上記でクローニングした遺伝子のうち、pleiotrophin, Secretory leukocyte protease inhibitor, Fibulin-5, Insulin-like growth factor-binding protein-5, LPS-binding protein, Cellular retinol binding protein-1と1つのEST (2E4)の7つの遺伝子をretrovirus vectorを用いてMCH66C8, MCH416にtransfectし、各遺伝子を高発現するstable transfectantsを得た。現在、同系マウスへの移植により「浸潤能に依存しない転移」の誘導を試みている。
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