本年度は、東海大学病院で1989年-1998年にかけて微小肺腺癌として胸腔鏡下で切除された手術材料のうちstage T1N0M0の47例を組織学的に詳細に検討した。このうちAAHもしくはBACの範疇に入り、しかも対照正常肺組織を含めて新鮮凍結組織材料が保存されている3症例をdifferential display用に選別した。これらの症例の新鮮凍結材料をグアニジンチオシアネート存在下でホモゲナイズし、塩化セシウム溶媒中で超遠心分離して全RNAを抽出した。これら全6種類のサンプルRNAを9種類のoligo d(T)蛍光リバースプライマーを用いて逆転写し、24種類のフォワードプライマーと組み合わせて、のべ216通りの第一段階PCRを行った。反応産物をDNAシークエンス用電気泳動装置を用いてDNAを分離し、蛍光バイオイメージアナライザー(FMBIO-II Multi-View)上で腫瘍特異的に発現が増加/減少していると思われたバンド347本を切り出した。ゲルよりDNAを抽出し、同じ組み合わせのプライマーを用いた第二段階PCRで再増幅した後H.A.Yellow含有アガロースゲル電気泳動にて目的のバンドを分離、回収した。さらに伸長プライマーを用いた第三段階PCRで再増幅した後H.A.Red含有アガロースゲル電気泳動にてDNAを分離し回収した。この段階までで300個の候補遺伝子の断片が選別された。現在これらの遺伝子断片のダイレクトシークエンスを行っている最中である。
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