疾患モデルマウス(MRL/lprマウス)に5.5Gyx2回放射線分割照射後、門脈内に正常異系骨髄細胞を移植した群はほぼ全例が長期(処置後6ヶ月以上)生存し、一方、静脈内移植群は、処置後6ヶ月で全例が死亡した。従って、経門脈的骨髄移植は従来の経静脈的骨髄移植に比しドナー細胞の生着を促進することが明かである。門脈内投与におけるドナー細胞の早期動態(3〜14日後)の解析の結果、1.門脈内に骨髄細胞を投与した群においては、脾臓、骨髄、肝臓内のリンパ・骨髄球系細胞は急速にドナー由来細胞に置換されること、2.これらの細胞中のドナー由来造血前駆細胞(成熟分化マーカー陰性・c-kit陽性細胞)の頻度は門脈内投与群において有意に高値を示すこと、3.門脈内投与後、肝臓内もしくは脾臓内においてドナー由来細胞の造血巣が認められ、造血巣と同部位あるいはこれに隣接してストローマ細胞が存在すること、4.門脈内投与群において、ドナー由来ストローマ細胞が宿主骨細片の培養により検出されること、が明らかにされた。これらの結果から骨髄細胞の門脈内投与は肝臓内における造血幹細胞とストローマ細胞の相互作用を促進し、肝臓もしくは脾臓における初期造血巣の形成とその後のドナー由来リンパ・骨髄球系細胞の増殖・分化およびその生着効率を高めることが想定された。また、門脈内骨髄移植群では移植後14日の時点でドナー細胞による血液系細胞の再構築が認められるが、脾臓および肝臓内にドナー由来樹状細胞(MHCクラスII陽性/CD11c陽性)も出現している。これらレシピエントではドナーMHCに対するトレランスが誘導されており、移植後早期の樹状細胞の出現がドナー特異的トレランスを誘導している可能性が高いことが明らかになった。
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