研究課題
染色体バンド11q23転座は造血器腫瘍の各種の白血病に観察され、とりわけ1歳以下の乳児白血病における染色体転座の主な切断点の一つである。11q23転座を持つ白血病は一般的に予後が悪いとされており、その病態の究明が急務である。これら11q23転座の責任遺伝子としてMLL遺伝子が単離された。我々は分子生物学的解析からMLL遺伝子が転座によって一定の領域で切断され、転座のパートナー遺伝子と融合しキメラ蛋白を作ることによりMLL蛋白の本来の機能がdominant negativeに不活化され、癌化に関わっていることを証明した(Oncogene 1994,Cancer Res.1998)。今回、生後10ヶ月の乳児の白血病細胞にみられたt(6:11)(q27;q23)を解析し、第6番側にAF6を同定し、本来のキメラMLL遺伝子であるMLL exon 6/AF6(染色体6q27)以外にMLL遺伝子のexon 5がスプライスアウトされたvariant MLL exon 5/AF6が存在することを認めた。このバリアントMLL exon 5/AF6は臨床経過から薬剤耐性と関連している可能性が示され、キメラMLL遺伝子のバリアントと薬剤耐性又は予後との間に関連のあることが示唆された(Genes Chromo & Cancer 2000)。近年、亜ヒ酸がレチノイン酸抵抗性の急性前骨髄球性白血病に著効を示すことが報告されているので、11q23転座を有するB細胞白血病細胞3株を低濃度の亜ヒ酸に暴露した。その結果、すべての細胞株で細胞で増殖抑制が観察され、アポトーシスが誘導された。アポトーシス誘導はMLLキメラ蛋白の減少と相関しており、MLLキメラ蛋白とアポトーシスとの関連が示唆された(Leukemia and Lymphoma 2000)。以上の結果からMLLキメラ蛋白が細胞増殖のみならず、細胞死、薬剤耐性にも関与していると考えられた。
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